航空機のジェットエンジンが火山灰を吸い込めば、最悪の場合、エンジンが停止する。そのため、大規模な火山噴火によって大量の火山灰が噴出、拡散すれば、航空交通網が広域にわたり大きな影響を受ける。2010年には、アイスランドのエイヤフィラトラヨークトル火山の噴火によって、ヨーロッパ域内及びヨーロッパの都市と世界を結ぶ多くの航空便が欠航を余儀なくされ、その影響は約1ヶ月にも及んだ。

日本は世界でも有数の火山大国であり、将来、必ず航空網に大きな影響を及ぼすレベルの大規模噴火が生じる。例えば、桜島では1779年の安永大噴火、1914年の大正大噴火と、周期性を持って大噴火が発生しており、次の大噴火も数十年のオーダーの範囲で必ず発生すると考えられている。桜島にて大噴火が生じれば、最悪の場合は、関西、中部、東京の日本の主要空港が同時に火山灰の影響で使えなくなるシナリオも考えられる。

一方で、火山活動にかかる観測技術の発展により、大噴火が発生する前に、その予兆現象を捉えることが可能となった。また、火山灰拡散予測モデルも開発されており、こうした予兆現象段階で、計画的欠航や航空機避難などの事前対応を講じれば、影響を大幅に軽減できる。本研究では、(航空交通、情報学などを含む)土木計画学、火山学、気象学の専門家及び航空業界の実務家が連携しながら、大規模火山噴火直前期における航空交通網の危機管理体制の構築を目指している。

<関連文献>

藏原これはる, 大西正光, Haris RAHADIANTO:大規模噴火時の国内輸送における航空会社への影響評価, 令和2年度防災研究所研究発表講演会資料, 2021.

Ziyang LIU, Masamitsu ONISHI, Masato IGUCHI, Mikio TAKEBAYASHI: Developing an Airport-specific Volcanic Early Warning System for Aviation Preparedness, 令和2年度防災研究所研究発表講演会資料, 2021.

大西正光:大規模噴火時の航空交通の危機管理体制に関する研究, 京都大学防災研究所年報 (62A), pp. 193 – 195, 2019.

大西正光:大規模噴火時の航空交通の危機管理体制構築に向けて, 平成30年度京都大学防災研究所研究発表講演会, 2019.

鹿児島空港における火山灰対策視察の様子

2019年に開催された国際ワークショップ