「ゴミはゴミ箱に捨てましょう」、「健康的な食生活を心掛けましょう」という、よく目にするメッセージは、皆さんの行動を変えているだろうか?ゴミはゴミ箱に捨てたほうがよいことはみんな知っているし、唐揚げではなく野菜を食べたほうがよいこともみんなよく知っている。けれども、ポイ捨てはなくならないし、塩分の過剰摂取や肥満は社会問題であり続けている。
それでは、「ゴミはゴミ箱に!」と鼻息荒くして言い続けるよりも、ゴミ箱にバスケットゴールをつけるとどうだろうか?それを見た人は思わず、ゴミをシュートしたくなるだろう。「健康的な食生活を!」という学食の張り紙に効果はなくても、学食の入り口付近に野菜メニューを多くするだけで、野菜を摂る人が増えることが知られている。このように、場のデザインやメッセージの出し方の工夫、その他の様々な仕掛けによって、人々に望ましい選択肢を取るように促す手法がナッジである。
ナッジを避難・防災の領域にも生かすことはできるだろうか。「事前に避難場所を確認しておきましょう」とハザードマップに書かれていても、現実に確認する人は少ない。「避難指示」が発令されても避難する人は10%に満たないことがほとんどだ。従来からの防災意識啓発ではなく、人が思わず避難・防災してしまうデザインを構想してみよう。それが本研究のアイデアでる。
しかし、なりふり構わず人々を誘導すればよい、ということではもちろんない。誘導された帰結として、人々に不利益(避難に失敗するなど)が生じることはないだろうか。そもそも、人々を誘導する手法に正統性はあるのか。検討すべき課題はたくさんある。
スマホゲーム「黒潮の秘密」アプリはナッジのエッセンスを取り入れながら、当研究室が長年かかわり深い愛着ある高知県黒潮町のおススメスポットを、思わず訪れてしまう、そういう仕掛けが詰まっている。
ぜひアプリを片手に、黒潮のまちを探索してみてほしい。
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